
管理栄養士として働くためには、国家試験に合格し、厚生労働大臣から免許を受ける必要があります。ただし、試験を受けるには受験資格があり、新卒か既卒かによって受験までの流れが異なります。
この記事では、管理栄養士国家試験の受験資格について、新卒者・既卒者それぞれのルートや準備の流れを整理し、さらに試験の難易度や合格率についてもわかりやすく解説します。
管理栄養士国家試験には、大きく分けて2つのルートがあります。どちらを選ぶかによって、受験資格を得るまでの期間が異なります。
• 4年制の管理栄養士養成施設を卒業するルート
• 栄養士として実務経験を積むルート
それぞれの特徴を見ていきましょう。
もっとも早く受験資格を得られるのは、厚生労働大臣が指定する「管理栄養士養成施設」を卒業するルートです。対象となるのは4年制の大学や専門学校で、所定のカリキュラムを修了すれば、卒業と同時に国家試験の受験資格が得られます。
カリキュラムは厚生労働省と文部科学省が定める基準に基づいており、基礎栄養学や応用栄養学などの座学に加えて、病院・福祉施設・学校・事業所などでの臨地実習も組み込まれています。
このルートは、学習過程が体系的に組まれているため、自分で勉強計画を立てる負担が少なく、効率的に資格取得を目指せるのが魅力ですね。
栄養士養成施設を卒業し、栄養士として実務経験を積むことで管理栄養士国家試験の受験資格を得ることもできます。栄養士養成施設には、修業年限が2年、3年、4年の3種類あり、それぞれの修業年限に応じて、必要な実務経験の年数が異なります。
• 2年制を卒業した場合: 3年間の実務経験が必要
• 3年制を卒業した場合: 2年間の実務経験が必要
• 4年制を卒業した場合: 1年間の実務経験が必要
なお、実務経験は以下のような厚生労働省令で定められた施設で積む必要があります。
• 寄宿舎、学校、病院等の施設であって、特定多数人に対して継続的に食事を供給するもの
• 食品の製造、加工、調理または販売業を業とする営業の施設
• 学校教育法第1条に規定する学校および同法第83条第1項に規定する各種学校
• 栄養に関する研究施設および保健所、その他の栄養に関する事務を所掌する行政機関
• 前各号に掲げる施設の他、栄養に関する知識の普及向上その他の栄養の指導の業務が行われる施設
出典:全国栄養士養成施設協会「栄養士になるには」
管理栄養士の資格について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
『管理栄養士の資格は社会人でも取れる?取り方・難易度・学習方法を徹底解説!』
管理栄養士になるまでに必要な期間は、どのルートを選ぶかによって大きく変わります。自分の状況や学習環境、かけられる費用を踏まえて、最適なルートを選ぶことが大切です。
新卒ルートでは、必要な期間は学校に通う4年間のみです。卒業と同時に受験資格を得られるため、その年に国家試験に合格すればすぐに管理栄養士として働けます。
もっとも早く資格を取得できる方法ですが、4年制大学や専門学校に通うには学費がかかります。目安としては次の通りです。
• 国公立大学(4年制):約240万円
• 私立大学(4年制):約400万~600万円
• 専門学校(4年制):約500万円
費用を抑えるなら国公立大学が有利ですが、その分入試の難易度は高めです。
既卒ルートは、栄養士養成施設の修業年限によって実務経験が必要になります。たとえば2年制なら3年の実務経験が必要となり、最短でも合計5年かかります。
このルートは、すでに栄養士として働いている人がキャリアアップを目指す場合や、経済的な理由で働きながら資格を取りたい人に適しています。
ただし注意点もあります。仕事と両立して学習時間を確保しなければならない点や、勤務先での業務が厚生労働省の定める実務経験として認められるかを事前に確認する必要がある点です。
直近(令和7年3月実施)の管理栄養士国家試験の合格率は 48.1% でした。過去5年の合格率を見てみると、次の通りです。
• 2021年度(第35回):64.2%(受験者数16,019名、合格者数10,292名)
• 2022年度(第36回):65.1%(受験者数16,426名、合格者数10,692名)
• 2023年度(第37回):56.6%(受験者数16,351名、合格者数9,254名)
• 2024年度(第38回):49.3%(受験者数16,329名、合格者数8,056名)
• 2025年度(第39回):48.1%(受験者数16,169名、合格者数7,778名)
このように直近2年間は50%を下回っており、難易度が高まっている傾向が見られます。
管理栄養士国家試験の合格率は、新卒者の方が7~8倍ほど高くなっています。例として、令和7年 (第39回)の試験結果を整理すると以下のとおりです。
• 全体:48.1%
• 新卒者(管理栄養士養成課程):80.1%
• 既卒者(管理栄養士養成課程):11.1%
• 既卒者(栄養士養成課程):11.7%
ご覧のように、新卒者の合格率が8割を超える一方、既卒者は1割前後にとどまっています。過去の試験でも同様の傾向が続いており、新卒者の方が合格しやすいといえるでしょう。
その理由は、学習環境や学習時間の違いにあります。新卒者は4年間の体系的なカリキュラムを通して集中的に学習するのに対し、既卒者は働きながら独学で学ぶことが多いため、学習時間を十分に確保しにくいのです。また、卒業から時間が経っていると学んだ内容を忘れてしまっていることも、合格率の差につながっています。
管理栄養士の試験の難易度についてはこちらの記事もおすすめです。
『管理栄養士国家試験の難易度を徹底分析!合格率・受験資格・対策からメリットまで』

管理栄養士国家試験を受験するには、必要な書類を揃えて手続きを進める必要があります。準備の流れは次の通りです。
① 栄養士免許証の写しを用意する
② 新卒者は卒業証明書を提出、既卒者は勤務先に「実務証明書」を発行してもらう
③ 願書を入手し、必要書類をそろえて提出する
新卒者・既卒者ともに共通して必要なのが「栄養士免許証の写し」です。これに加えて、新卒者は養成施設の「卒業証明書」を、既卒者は勤務先から実務経験を証明する「実務証明書」を提出しなければなりません。とくに既卒者は証明書の発行に時間がかかることもあるため、早めの準備が大切です。
願書は例年9月中旬から配布され、提出期間は11月上旬~12月上旬にかけて設けられます。受験手数料(6,800円)は、願書に収入印紙を貼付して納める形となっています。