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「栄養士」と「栄養教諭」職場における役割や仕事内容の違いとは?

読者の皆さんは、2005年から始まった新しい資格制度「栄養教諭」をご存知でしょうか。
栄養教諭は、小・中学校などで児童・生徒の栄養の指導、衛生管理、食育(食の教育)を行う教員のことです。今回は、この「栄養教諭」について、仕事の内容や範囲、栄養士と何が違うのかなどを記事で取り上げてみたいと思います。

栄養教諭の特徴は「教員」として働くことになる

まず、学校を職場として活動する栄養士は、学校栄養職員という校務に該当するため、いわゆる教員として教壇に立つことはありませんでした。言い換えると、公立学校などに地方公務員として勤務する「学校栄養士」とも呼ばれていますが、給食の献立、調理業務、給食室の衛生管理、生徒に配布する給食だよりなどを行いますので、バックヤードで働くことが多いのが特徴です。
これに対し、栄養教諭は、栄養士が「教員」として学校に携わることになりますので、他の先生と同様、生徒に対して栄養や食事などに関する授業を行うことができます。

栄養教諭の仕事は食育を軸にした指導や教育が重要

ここでは、栄養教諭の代表的な仕事を3つに分けて説明していきましょう。

食育の授業
栄養教諭の仕事は、食育を軸にした指導や教育が重要です。
学校栄養士と同様に、献立の作成や給食管理業務などと並行して、食育に関する授業を行うことが大きな特徴の1つと言えるでしょう。
授業については、家庭科、総合学習、学級活動などの時間を受け持つことが多く、担任や家庭科の先生などと連携しながら授業をします。
個別相談
最近は、アレルギーを持つ生徒も多く、生徒もしくは保護者に対しても、個別の食育指導を行うことが業務として含まれてきます。専門的な栄養に関する知識を活かして、教諭の立場から、栄養が偏らないよう生徒に指導したり、食生活に悩みを抱える保護者の相談に乗ったりします。
全校集会、各種委員会、クラブ活動などの担当教員
学校の方針によっても異なりますが、全校集会をはじめ、各種委員会、クラブ活動などにおいて、担当教諭として栄養について指導する場合があります。教育、指導については、食育についての重要性を伝えることを基本としながら、例えば、夏場は食中毒などの注意喚起として食の衛生管理を徹底することもあるでしょう。

栄養教諭の資格の取得について

次に、栄養教諭の資格について取り上げます。
栄養教諭になるためには、端的に説明すると、教員免許が必要となります。
基本的には、栄養教諭の養成課程がある学校を卒業することで取得できますが、学校の種別によって、取得できる教員免許の種類は、専修免許(大学院修士課程修了程度)、一種免許(大学卒業程度)、二種免許(短期大学卒業程度)に分かれていますので、しっかりと区別して把握しておきましょう。資格要件の詳細は下記の表をご確認下さい。

栄養教諭免許の資格要件
大学院 ・専修免許状 修士の学位+管理栄養士免許+24単位※1
大学 ・一種免許状 ※2+管理栄養士免許又は管理栄養士養成課程修了(+栄養士免許)+22単位
短期大学 ・二種免許状 準学士の称号 ※3+栄養士免許+14単位

※1は一種免許状授与の所要資格に加えて必要な単位数。
※2は管理栄養士養成施設(4年制の専門学校)卒業も含む。
※3は栄養士養成施設(2年制以上の専門学校等)卒業も含む。
出典:文部科学省「栄養教諭免許制度の概要」

栄養教諭免許の取得ルート

栄養教諭免許は比較的に新しい資格制度といったこともあり、教員免許があってこれから栄養教諭免許の取得を目指す場合や、栄養士、管理栄養士の資格は取得した状態から栄養教諭免許を目指す方もいるなど、栄養教諭免許を取得したいと考える方には様々なケースがあると想定できます。ここでは、受験者の状況に応じた取得ルートをいくつか紹介しておきましょう。

教員免許を取得済みで栄養士の免許を持っていない場合
教員免許を持っている場合には、栄養士養成施設(専門学校や短大の場合は最短で2年)に通い、栄養士免許を取得する必要があります。
また、既に養護教諭(保育室の先生)の免許を持っている場合は、履修科目が変わりますので、受講した科目を学校側に伝え、どの授業を受けることになるのか相談してください。
栄養士、管理栄養士の資格は取得済みの場合
栄養士もしくは管理栄養士の資格は取得している場合は、栄養教諭の免許が取得できる学校に再入学するか、または科目等履修生となる必要があります。現時点では、このようなルールになっているため、通信課程などはなく、栄養教諭の免許が取得できる学校にて必要単位を取得しなければ栄養教諭にはなれません。なお、二種免許であれば、専門学校(最短で2年)で栄養教諭の免許を取得することは可能です。
学校栄養士の経験がある場合
学校栄養士としての勤務経験がある場合には、免許法認定講習と教職員検定を受けることで、栄養教諭免許の取得が可能です。また、教員免許取得のための単位数は、実務経験によって異なります。
栄養士資格や教員免許などが無資格の場合
栄養教諭を取得するには、前提として栄養教諭の免許が取得できる養成学校に入学する必要があります。現在、高校生の方の場合であれば、栄養教諭の免許が取得できる専門学校をはじめ、短大や大学に通いことが選択して挙げられますが、それぞれの学校で必要単位を取得して卒業すれば栄養教諭の資格が取得できます。

栄養教諭の就職状況は、競争率が低下して採用者数が増えている傾向

栄養教諭の就職状況について、文部科学省「平成30年度公立学校教員採用選考試験の実施状況について」を見ると、受験者数が合計1,886人(女性は1,766人)となっており、その中で採用は254人(このうち女性が247人)となっていましたので、競争率は7.4であることが分かりました。過去5年間の推移を確認したところ、年によっても若干異なりますが、受験者数は増加しているものの、競争率は低下し、採用者数が増えている傾向になります。

栄養教諭の受験者数、採用者数、競争倍率の推移

※()の数字は女性になります。
出典:文部科学省「公立学校教員採用選考試験の実施状況について」から抽出

学校栄養士よりも栄養教諭のほうが業務範囲は広い

栄養教諭は、「教員」として働くので仕事の役割が学校栄養士とは異なり、学校栄養士が行っている給食の献立、調理業務、給食室の衛生管理の業務に加え、食育を中心とした教育や指導まで進めていきますので、学校栄養士よりも対応する業務範囲が広がると考えて良いでしょう。栄養教諭が行う栄養に関する指導や教育は、総合学習、学級活動、家庭科の授業、全校集会、クラブ活動などの時間で行われ、児童、生徒、保護者に加え、他の教師についても対応することになります。

栄養教諭のやりがいや楽しさは?

栄養教諭のやりがいや楽しさは、やはり栄養の専門家である教育者として、学校の教壇に立つことができることでしょう。中でも、子どもたちから「今日の給食がとても美味しかった」「好き嫌いはあるけど完食できた」など、自身が関わった仕事の成果が感じられる時には、モチベーションが上がる方も多いようです。このような背景には、例えば、給食センターにこもって働いているような場合、子ども達がどんな様子で食べているのか把握することが出来ず、子ども達と給食のことで会話すること機会も少ないことが理由として挙げられるでしょう。こうした経験は、子ども達の喜ぶ姿を想像しながら仕事することに繋がり、栄養教諭のやりがいや楽しさが増える方も多いようです。

まとめ
今回は、学校栄養士と栄養教諭を比較しながら栄養教諭の仕事内容や役割について説明しましたが、児童・学生と密接な関わりを持ち、且つ栄養を専門分野しながら教育者として仕事したい方には栄養教諭は最適な資格になります。また、成長過程にある子どもたちに向けて、食生活に対する興味関心を高めていくための指導や教育は、給食を介して食育を進めることが栄養教諭の大きな役割になることでしょう。