
管理栄養士は国家資格であり、人々の食と健康を守る上で欠かせない存在です。とはいえ「誰でも取れるの?」「社会人でも挑戦できるの?」と不安に思う方も多いでしょう。
実際には、管理栄養士になるためのルートはいくつかあり、社会人の方にとっては「実務経験の有無」や「勉強時間の確保」が大きなポイントになります。
この記事では、管理栄養士資格の概要から取得ルート、難易度や合格率までわかりやすく整理しました。資格取得を考えている方が、自分に合った方法で無理なく挑戦できるよう、ぜひ参考にしてください。
管理栄養士は、厚生労働大臣の免許を受けた国家資格で、栄養指導や栄養管理を専門に行う食と健康のスペシャリストです。病院や介護施設、学校、行政機関など幅広い現場で、病気やけがをした方から子ども、高齢者まで、一人ひとりの状況に合わせた栄養サポートを行います。
管理栄養士資格は栄養士の上位資格として位置づけられており、国家試験に合格して初めて取得できます。資格を持つことで、保健・医療・福祉・教育などの分野で責任ある役割を担えるのが特徴です。
近年は年間で約7,000~10,000人が資格に合格しており、2025年3月に実施された試験では16,169人が受験し、7,778人が合格し資格を取得しました。
管理栄養士の仕事内容について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
『管理栄養士はどんな仕事をするの?現場別仕事内容と活躍スタイルを徹底解説』
管理栄養士と栄養士は、資格を与える免許の権限から業務の範囲まで、明確に役割が分かれています。
まず、免許の交付者が異なります。管理栄養士は厚生労働大臣の免許、栄養士は都道府県知事の免許を受けて働きます。
次に、業務対象に違いがあります。栄養士は主に健康な人や集団を対象としますが、管理栄養士はそれに加えて病気を抱える人や高齢者、乳幼児など、特別な栄養管理を必要とする人まで幅広く対応できます。
業務内容も異なります。栄養士が給食管理や献立作成、栄養教育を中心に担当するのに対し、管理栄養士は専門的な栄養指導や特定保健指導、食事の全体管理、労務管理、栄養管理計画の作成まで担うことができます。
さらに、必要な知識・スキルのレベルも違います。栄養士は栄養や食品に関する基本的な知識が求められる一方、管理栄養士は病気や症状に合わせた食事管理など、より高度で専門的な知識と技術を必要とします。
つまり、栄養士が「食を提供する専門家」だとすれば、管理栄養士は「食で健康を守る専門家」として、より責任の大きい役割を持っているのです。
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管理栄養士と栄養士の違いについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
『栄養士と管理栄養士の違いは?仕事内容・給料・向いている人まで徹底解説!』
管理栄養士は働くフィールドが幅広く、自分の興味や強みを活かせるのが魅力です。
• 医療施設:医師や看護師と連携し、患者の病状に合わせた栄養管理や指導を行う
• 学校給食:子どもの成長に必要な栄養バランスを考えた献立作成や食育活動を担当
• スポーツ分野:アスリートの体調管理やパフォーマンス向上のための食事サポート
• 福祉施設:高齢者や障がいのある方の健康維持や嚥下状態に合わせた栄養ケア
• 企業:食品メーカーの商品開発、社員食堂での健康管理など
このように、医療から教育、スポーツ、企業まで活躍の場は多岐にわたります。資格を活かして「自分らしいキャリア」を描けるのも大きな魅力です。
管理栄養士免許は誰でも取得できるわけではなく、国家試験を受験するには一定の条件を満たす必要があります。主なルートは以下の2つです。
• 新卒ルート
• 社会人ルート
それぞれの特徴を見ていきましょう。
もっとも一般的なのは、大学などの管理栄養士養成課程(4年制)を卒業し、そのまま国家試験に挑戦する方法です。
養成課程では、栄養学や食品学、公衆衛生学など幅広い分野を学ぶほか、病院や学校での臨地実習も行われ、実践的なスキルを身につけます。卒業と同時に受験資格を得られるため、最短で管理栄養士を目指せるのが大きなメリットですね。
社会人の場合は、まず栄養士養成施設を卒業して栄養士資格を取得し、その後に実務経験を積むことで受験資格が得られます。実務経験の年数は卒業した養成施設の修業年数によって異なり、次のとおりです。
• 2年制を卒業した場合:3年間の実務経験
• 3年制を卒業した場合:2年間の実務経験
• 4年制を卒業した場合:1年間の実務経験
実務経験は、病院や学校、福祉施設など、栄養管理や給食管理を行う厚生労働省が定めた施設で積まなければなりません。社会人にとっては働きながら勉強を続ける必要があるため、計画的な学習と実務経験の両立がポイントです。
管理栄養士の試験の難易度や受験資格について詳しく知りたい方はこちらの記事もおすすめです。
『管理栄養士国家試験の難易度を徹底分析!合格率・受験資格・対策からメリットまで』
『管理栄養士国家試験の受験資格とは?ルート・難易度・流れを完全ガイド』
社会人から管理栄養士を目指す場合は、勉強時間の確保と実務経験を積むことが大きなポイントになります。管理栄養士養成課程には夜間や通信制がないため、日中の通学が難しい人は、まず栄養士資格を取得してから実務経験を積むルートを選ぶ必要があります。
働きながら資格取得を目指すときの工夫としては、次の2つがカギになります。
• スケジュール管理
• 予備校や通信講座の活用
スケジュール管理では、日々の学習計画を細かく立てることが大切です。余暇や休日はもちろん、通勤中に参考書を読んだり、昼休みに過去問を解いたりと、ちょっとしたスキマ時間をどう活かすかが合否を分けます。
予備校や通信講座の活用をうまく利用するのもおすすめです。独学だけだと計画の立て方やモチベーション維持が難しいこともありますが、講座なら効率よく勉強できます。
とくに通信講座は自分のペースで進められるので、仕事と両立しやすいのが魅力ですね。質問サポートや添削などがある講座を選ぶと、安心して学習を続けられます。
管理栄養士国家試験の合格率は平均で60%ほどです。しかし、近年では合格率は下降傾向にあり、令和3年は64.2%でしたが、令和5年は56.6%、令和6年は49.3%と下がってきています。
厚生労働省が発表している「第39回管理栄養士国家試験の合格発表」によると、令和7年の合格率は48.1%という結果でした。
この結果からも、新卒者の合格率が高い一方で、社会人など既卒者の合格率は1割前後と低くなっています。新卒者は養成施設で体系的に学習できるのに対し、既卒者は仕事と勉強を両立する必要があり、学習時間の確保や効率的な勉強が難しいことが大きな要因です。
さらに試験が難しいとされる理由のひとつが、出題範囲の広さです。管理栄養士国家試験では9科目に加え「応用力試験」も実施され、栄養学だけでなく、解剖生理学や生化学、疾患に関する知識など医療分野まで幅広く問われます。
<主な試験科目>
• 社会・環境と健康
• 人体の構造と機能及び疾病の成り立ち
• 食べ物と健康
• 基礎栄養学
• 応用栄養学
• 栄養教育論
• 臨床栄養学
• 公衆栄養学
• 給食経営管理論
• 応用力試験
このように出題範囲が広いため、特に社会人が合格を目指すには、仕事との両立を意識しながら計画的に学習を進めることが求められます。
管理栄養士資格を取るための道は一つではなく、自分の状況に合ったルートを選ぶことが大切です。意識したいポイントは以下の2つです。
• 現在の状況を確認する
• 専門家に相談する
まずは、仕事や生活環境を整理してみましょう。4年制大学に進学する余裕があるのか?それとも働きながら資格取得を目指す方が現実的なのか?を考える必要があります。また、今の職場で管理栄養士の受験資格に必要な実務経験を積めるかどうかも重要な判断材料です。
もし不安や迷いがあるときは、専門家に相談するのも有効ですよ。管理栄養士養成施設のオープンキャンパスに参加したり、キャリアアドバイザーに話を聞いたりすることで、より具体的に自分に合った道が見えてきます。