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管理栄養士・栄養士の展望について 今後、栄養士のニーズが高まる職場を紹介!

栄養士と管理栄養士の免許取得数は、厚生労働省の調査によると、現時点の最新の状況(令和元年現在)では、栄養士の免許交付数が累計にして1,079,322(平成29年度現在)、管理栄養士の名簿登録数が234,196(平成30年現在)もの数に達していることが分かりました。1年間あたりの免許交付数の平均を計算してみると、栄養士が約17,500、管理栄養士が約7,100になります。また、全国栄養士養成施設協会の調査では、栄養士養成施設の卒業生の就職実態(平成29年度現在)として、免許取得後の約9割の人は栄養士の資格を活かした職場で働いていることを明らかにしていました。
このように毎年多くの方が栄養士の資格を取得して就職していますが、現代においては、高齢化の進行や生活習慣病などの増加の傾向にあり、人々の健康に対する意識も益々高まっていることから、更に栄養士の活躍に注目を集めることが予測できます。そこで、今回は栄養士の必要性が高まりそうな職場をフォーカスし、今後の展望についても記事で取り上げてみたいと思います。

高齢化に伴って栄養士の需要や仕事の領域は広がる?

政府の見通しでは、現在は総人口が減少しており、65歳以上の高齢者の割合が上昇傾向にあるため、このまま進んでいくと、2065年には高齢化率は約2.6人に1人が65歳以上、約4人に1人が75歳以上になると推計しています。栄養士の仕事に置き換えて考えれば、高齢化が進むことによって、病気を未然に防ぐためにも適切な栄養指導が欠かせなくなり、病院や介護施設の利用の増加することになるので、栄養士の必要性が高まることは間違いないと言えるでしょう。現在、医療法においては、病床数100以上の一般病院には栄養士が1名以上、特定機能病院には管理栄養士を1名以上置かなければならないことが定められています。また、健康増進法では、「特定給食施設であって特別の栄養管理が必要なものとして厚生労働省令で定めるところにより都道府県知事が指定するものの設置者は、当該特定給食施設に管理栄養士を置かなければならない」としています。しかし、栄養士の求人数は全体的に少ない傾向にあるため、人気のある施設では内定競争倍率が高くなりやすい特徴があるのも事実です。このため、病院、社会福祉施設、介護保険施設などの新しい施設が開業されれば、栄養士の求人数が増える可能性はあるものの、必ずしも採用枠が増えるとは限りません。つまり、社会的な背景から栄養士の展望を描いてみると、病院、社会福祉施設、介護保険施設などで栄養士の必要性は高まることが予測できる訳ですが、同時に就職活動ではライバルも増えることになるので、例えば糖尿病療養指導士やスポーツ栄養士など、専門性を追求してみると新たな可能性や道が開けてくるのではないかと考えられます。
参考までに、現時点での最新版となる「栄養士養成施設の卒業生の就職実態(全国栄養士養成施設協会の調査/平成29年度)」の内訳を見てみると、病院24.3%、児童福祉施設18,9%、事業所18,3%、介護保険施設17,3%、その他7,7%(職種不明)などの職種が上位の結果になっていました。

将来的に栄養士のニーズが高くなる職場はどんなところ?

ここでは、高齢化や健康志向などの社会的な背景をもとに、将来的にも栄養士の必要性が高まりそうな職場や、専門性を高めて新たに活躍が期待できそうな職場などを中心に紹介していきます。職場の紹介については、基本的な仕事内容の説明だけでなく、その職場で新たに取得しておくと有利な資格も紹介していますので、併せて把握しておくと良いでしょう。

病院

病院における栄養士の仕事は、入院患者に合わせた食事を提供し、栄養の面から治療をサポートすることが必要です。入院患者の栄養管理については、医師の指示を基づいて栄養計画や献立を作成しますが、入院患者に合わせて、減塩食、低たんぱく食、流動食などを提供することになるため、食材管理から調理指導まで対応することが栄養士に求められるでしょう。また、管理栄養士の場合であれば、患者に対する栄養指導を行うことが仕事に加わりますが、入院患者だけでなく、糖尿病や高血圧などの生活習慣病で通院している患者に対しても指導することになります。
更には、入院患者に最良の栄養療法を提供するために多職種で構成された医療チーム(通称NST:Nutriton Support Team)のある病院であれば、医師、看護師、薬剤師、理学療法士などとともに、より高度な栄養管理を提供することも重要な活動になります。こうしたことに加え、病院を職場に選択するのであれば、高齢糖尿病患者の増加が大きな課題となっているので、管理栄養士が日本糖尿病療養指導士(CDEJ) を取得することも有効に働くでしょう。
今後、病院における栄養士の仕事は、栄養士も医学的知識を身につけ、医療スタッフと連携しながら活躍することが益々期待されると予測できます。

介護施設

介護施設には、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護療養型医療施設、サービス付き高齢者住宅、介護付有料老人ホーム、グループホームなど、入居者の介護度に応じて様々な種類があります。今後、介護施設の増加や多様化などに伴い、栄養士が活躍する機会も増えていくことでしょう。こうした介護施設では、入居者の要支援もしくは要介護などの介護度を考慮したうえで、飽きのこない献立を考えることのほか、美味しく、そして楽しく食事がとれるように工夫しなければなりません。また、主に管理栄養士などが行う栄養管理における指導については、介護職員、看護師などから入居者の健康状態を把握するために情報交換も必要となるでしょう。自社で調理を行うような介護施設であれば、刻み食や柔菜食などの加工方法など、どのような状態で食事が提供されているか、現場をチェックすることも栄養士の役目となります。そして、栄養士も介護支援専門員(ケアマネージャー)の資格が取得できるようになりましたので、介護施設を職場に選択するなら介護支援専門員の資格を取得しておくと有利です。

行政(自治体)

保健所や保険センターなどの地方公共団体で働く栄養士のことを「行政栄養士」と呼んでいます。行政栄養士の担う仕事として、主に地域住民に対する栄養指導などを行いますが、生活習慣病の改善と予防が大きな課題となっていますので、食に関する環境整備は行政の取り組みとしても大事な役割の1つとなっています。今後もその点は大きく変わることはないでしょう。行政栄養士として働く環境を挙げると、都道府県庁、市役所、町役場、保健所、保健センターなどがあります。仕事は、主には「個別指導」「集団指導」「地域づくり」「組織育成」「給食施設指導」の5つに分類できますが、例えば、40歳~74歳までの公的医療保険(国民健康保険等)加入者全員を対象とした保健制度となる特定保健指導をはじめ、乳幼児検診の個別栄養相談、要介護者や子育てをする家庭に訪問して栄養指導することや、地域の生活習慣病予防や離乳食講習会などに関する各種講習会の実施、ボランティアとして活動する栄養委員を養成するための栄養教室の実施、給食施設における栄養管理の指導や支援などが挙げられるでしょう。

自衛隊

国の安全を保つ軍事組織として活躍している自衛隊の中にも栄養士の仕事があります。
自衛隊は、陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊の3つに分類されますが、全国約260の勤務地があります。勤務地によって栄養士や管理栄養士に求められる仕事内容や職場環境も若干変わってくる場合がありますが、一般的にはそれぞれの駐屯地の基地内(隊員食堂)が職場になることが多く、各駐屯地には約1~3名程度の栄養士や管理栄養士が配属されることが多いでしょう。主には自衛隊員の栄養·管理を中心に、献立作成や栄養バランスの計算、食材選びから調理指導、衛生管理などを対応することになります。また、地震や台風などの自然災害時に備え、自衛隊員が被災地などの野外で炊事する際の教育や支援も行う場合が仕事として挙げられます。

アスリートなどが所属する各種競技団体やスポーツセンター

管理栄養士が専門性を高めて活躍できる職場の1つに、競技者などの栄養管理を行うスポーツの分野があります。こうした職場で栄養士が活躍するためには、日本栄養士会および日本体育協会の共同認定による資格「公認スポーツ栄養士」を取得すると、スポーツ栄養学、栄養マネジメント、スポーツ医学、運動生理学などスポーツ栄養の知識が身につくので、オリンピックなどを目指しているアスリートをはじめ、スポーツに打ち込むジュニア層や、健康の保持·増進などを目的にした生涯スポーツを楽しむシニア層に至るまで、各競技のトレーニング拠点や広域スポーツセンターなどにおいて、スポーツ栄養学に基づいた栄養管理を行うことができるようになります。

今後、管理栄養士や栄養士が取得しておくと有利な資格について

前述したように、管理栄養士や栄養士が取得しておくと有利な資格があります。
ここでは、上記で取り上げた「日本糖尿病療養指導士(CDEJ)」「介護支援専門員(ケアマネージャー)」「公認スポーツ栄養士」の3つの資格要件についてまとめました。

「日本糖尿病療養指導士(CDEJ)」の取得方法と受験資格

日本糖尿病療養指導士(CDEJ)の資格を取得するためには、受験者用講習会の受講し、受験資格の審査を経て、認定試験に合格する必要があります。

日本糖尿病療養指導士(CDEJ)の受験資格
①看護師、管理栄養士、薬剤師、臨床検査技師、理学療法士のいずれかの資格を有して
いること(医療職免許証の写しの提出が必要)
②下記の(1)(2)(3)の条件を全て満たしている医療施設において、過去10年以内に2年以上
継続(注1)して勤務し糖尿病患者の療養指導業務に従事した方で、かつこの間に通算
1,000時間以上糖尿病患者の療養指導を行った(注2)こと
(1) 当該施設に勤務する、以下の(イ)(ロ)のいずれかに該当する医師が、糖尿病療養指導にあたり受験者を指導していること
(イ)常勤または非常勤の日本糖尿病学会専門医(非常勤の場合、勤務は月1回以上)
(ロ)日本糖尿病学会の会員で糖尿病の診療と療養指導に従事している常勤の医師
(2) 外来で糖尿病患者の診療が恒常的に行われていること
(3) 糖尿病の患者教育、食事指導が恒常的に行われていること

③受験者が2.の「糖尿病療養指導業務に従事した期間」に当該施設で携わった糖尿病療養
指導の自験例が10例以上あること

④本機構が開催する講習(eラーニング)の受講を修了していること
(注1)「2年以上継続」とは:異動、転勤、退職と再就職等により、業務に従事する施設を変更した場合、変更前後ともに(1)(2)(3)の条件を全て満たす施設で引き続き糖尿病患者の療養指導業務に従事していれば、「継続して業務に従事している」こととして申請できます。この場合、変更前後の施設で業務に従事した期間を合わせて継続2年以上であることが必要です。但し、業務に従事した期間は継続している必要があり、被雇用者としての身分が1日でも中断している場合は中断の前後どちらかの期間で計算してください。なお、以下の場合、その期間を業務従事期間に含めることはできませんが、その前後の期間は継続しているものとして合算できます(所定の証明書を添付)。
· 産前·産後休暇(産前は出産予定日前8週(多胎は14週)、産後8週まで)、育児休業
(原則として子が1歳に達するまで)
· 病気·介護休職(6ヵ月まで)
· 施設の事情により(1)(受験者を指導する医師)の条件を満たせない場合(6ヵ月まで)

出典:一般社団法人日本糖尿病療養指導士認定機構

「介護支援専門員(ケアマネージャー)」の取得方法と受験資格

介護支援専門員(ケアマネジャー)の資格を取得するには、各都道府県が実施している介護支援専門員実務研修受講試験に合格し、実務研修(15日間·87時間の講習+3日間の実務)を受ける必要があります。受講後は、登録申請をした後、介護支援専門員証が交付されます。

介護支援専門員(ケアマネージャー)の受験資格
下記の業務を通算して5年以上かつ900日以上従事した者
·該当の国家資格等に基づく業務
医師、歯科医師、薬剤師、保健師、助産師、看護師、准看護師、理学療法士、
作業療法士、社会福祉士、介護福祉士、視能訓練士、義肢装具士、歯科衛生士、
言語聴覚士、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師、
栄養士(管理 栄養士)、精神保健福祉士
·生活相談員·支援相談員·相談支援員·主任相談支援の業務

出典:公益財団法人東京都福祉保健財団「東京都介護支援専門員実務研修受講試験」参考

「公認スポーツ栄養士」取得方法と受験資格

公認スポーツ栄養士の資格の取得は、スポーツ選手の競技力の向上や生涯スポーツの普及を推進する「日本体育協会」と、管理栄養士·栄養士で組織する職能団体の「日本栄養士会」の共同認定が必要となり、共通科目受講、知識確認テスト、集合講習受講、課題レポートの提出などが要件となります。カリキュラムは、事前学習及び集合講習の共通科目が150 時間程度、集合講習および実技·実習、インターンシップなどの専門科目が約116.5 時間程度が目安となり、受講料として38,000 円(内訳/共通科目免除なし:20,000 円、専門科目:18,000 円)のほかに、専門科目の再試験の受験料に口頭試問が一回当たり15,000 円、プレゼンテーションが一回当たり30,000 円、教材費3,000 円(リファレンスブック代)などが別途となります。受講資格としては、受講申込み年度の 4 月 1 日現在満 22 歳以上の管理栄養士であること、スポーツ栄養指導の経験がある者または予定のある者のうち、主催者が認めた者とし、受講者は70 名以内までとすることが定められています。

公認スポーツ栄養士の受験資格
·管理栄養士であること
·受講開始年度の4月1日時点で満22歳以上
·スポーツ栄養指導の経験がある者、または、予定がある者

出典:NPO 法人日本スポーツ栄養学会

まとめ
現在の日本が抱えている高齢化や生活習慣病の増加などは社会問題として深刻です。こうした社会問題は栄養士の仕事にも深い関わりを持っており、これから栄養士の必要性は益々高まっていくことでしょう。その一方では、栄養士が働く職場(職種)に特化した専門性が求められる傾向が一層強まるかもしれません。これから転職を考えている方は、将来も見据えて、栄養士として新たに活躍できる職場に目を向けたり、資格を取得したりするなど、自身に合ったキャリアアップやスキルアップを目指すようにしてみて下さい。