栄養士として希望した職場に入社はできたものの、実際に仕事を始めてみると、時間に追われて毎日「大変」、立ち仕事が多いから体力的にも「辛い」、人間関係も難しいので「苦労」などと思うこともあるでしょう。こうした悩みは、職場にもよってもケースは異なりますが、栄養士をされている方が抱えていることの一例です。そんな時、貴方なら物事をどのようにしてポジティブに受け止め、どうやって解消していきますか?今回は、管理栄養士や栄養士の仕事の悩みを挙げながら、具体的なポジティブに考える方法や具体的な対処の方法などを記事で紹介したいと思います。
栄養士の職場によっても一日の流れは変わってきますが、例えば病院の場合はどうでしょうか。病院に勤務する栄養士の一日の仕事の流れを確認してみると、8時30分から病棟カンファレンスを行った後、患者の情報収集、患者の栄養評価、栄養計画書の作成、栄養プランの確認や調整などを12時頃まで行い、12時からは患者及び家族から食事の摂取状況を確認してから13時に自身の昼食を取り、14時頃からNSTなどの回診、15時から17時30頃まで病棟業務で終了(日によって1~2時間程度残業)といったようなスケジュールで実際に働かれている方がいます。
これに加え、職場によっては、大量の調理業務を担う場合がありますが、具材をかき回すにも相当な力が必要になることに加え、とにかく手際よく調理をしないといけないため、常に時間に追われることになるでしょう。こうした一日の仕事が充実していると感じる方もいれば、時間に追われて毎日疲れ切ってしまい方もいます。ここで注目したいことは、仕事のパフォーマンスを上げるための一日の睡眠時間です。少し前までは睡眠は8時間が必要と言われていましたが、最近の研究結果では、その人にとってのベストな睡眠時間は遺伝子や働き方などによっても変わってくるため、睡眠の時間数だけで善し悪しを判断することは難しく、「起きてから4時間以内に眠気が来ない」というのが良い睡眠の基準として有力な説のようです。ちなみに、健康管理上は、睡眠のゴールデンタイムが22時~深夜2時の間で、該当する時間帯に睡眠を取るように心がけると良いと言われているので覚えておきましょう。
学校や介護施設など、厨房業務を直営している栄養士の仕事の場合では、立ち仕事の時間も長く感じることでしょう。厨房業務の経験者の悩みを確認してみると、「栄養士として大切な事務の仕事と厨房業務の比重が逆転している」と感じている方がおり、どちらかといえば「調理時間の合間をぬって事務仕事をしている」といった意見も挙げられていました。また、厨房業務に限らず、病院でも、患者の栄養状態の確認や栄養指導などで病棟のラウンドすることも多いので、ゆっくり席について事務仕事はしてないと感じている方もいるようです。このような場合には、立ったままで仕事をしていると、筋肉内に老廃物が溜まり、疲労感やむくみが酷くなったりしますので、血流を良くするように心がけましょう。普段からストレッチをしたり、入浴後のマッサージを行ったりするのは効果的で、お昼休みの休憩時間を利用してストレッチをしたり、アロマが配合されたオイルでリラックスしながらマッサージしたりするのが良い解消法です。また、腰痛に悩んでいる方は、腰痛ベルトやコルセットを使って、腰への負担を軽減するように工夫することも1つでしょう。
栄養士の職場は、高齢者施設、病院、保育園など、一般的には女性が多い職場で働くことになります。こうした1つの事業所に対して栄養士を雇用する人数が全体的に少ない傾向にありますので、人間関係が上手くいかなければ、どうしても孤立しやすい環境が生まれてしまうのが現状です。また、特に高齢者施設などの場合、正社員が少なく女性のパートが中心の職場となり、年々職員の年齢層が高くなっている傾向があるので、若いうちは自分よりも年齢や経験のある方に対して、仕事をお願いしなければならないようなケースがあるのも珍しくありません。
その職場で関わる人が自分よりも年齢や社会経験が上回っていると、上下関係などの格付けもあって、ギスギスした状態になりがちです。
対処法としては、仕事は丁寧にお願いするように心がけ、「相手の挑発にのらない」ことが大事で、自分が感情的になって報復しようとすれば関係が険悪化するだけですから、逃げるが勝ちと考えるのが正解です。また、「聞き役に徹する」「プライベート情報は極力話さない」なども効果的で、余計な摩擦を起こさないように回避するよう心がけましょう。このほかにも、職場に相談する仲間がいなければ、都道府県の栄養士会の研修に参加して交友関係を広げてみるなど、社内でなくても同業の仲間ができれば孤独感の解消に繋がるかもしれません。
高齢化が進むにつれて、病気を未然に防ぐためにも適切な栄養指導が欠かせなくなり、病院や介護施設の利用の増加することになるので、今後は益々医療との連携や専門性を高めることが栄養士に期待されるでしょう。栄養士の仕事では、健康増進に向けての支援、生活習慣病の予防や重症化及び合併症などの軽減、生活者への栄養指導(栄養教育)などが行われますが、その一方では専門性や成果が見えにくいなどの意見が挙がることが多いようです。専門性の部分でいえば、栄養士の方は管理栄養士の資格を取得してみることや、管理栄養士であれば「日本糖尿病療養指導士(CDEJ)」「介護支援専門員(ケアマネージャー)」「公認スポーツ栄養士」などの資格を取得すると、栄養士の活躍できる場も広がりますので効果的と言えるでしょう。また、患者などの生活習慣の改善を促進する意味では、①食生活を改善するための患者などに対する動機づけ(問題意識を高めること)、②体重減量や検査値改善のために目標設定(7割程度が実行されれば変化をもたらすことを伝えること)、③患者などのタイプ別アプローチ方法の確立(目標に対する取り組み状況の評価方法は個々の性格などに合わせて変えること)など、一定の成果を強調しながら共有していくことも大切です。
栄養士の退職理由を見てみると、栄養士と調理師との連携が難しいことなどが理由として挙げられているケースがありました。これは職種や立場の違いが主な要因ですが、それだけでなく、人員構成としては栄養士よりも調理師のほうが多いこともあって、多数派の意見に流されやすい傾向も理由の1つに考えられそうです。流されてしまう理由には、間違うことへの恐れや、反対意見を言ったら批判することになるといったケースが挙げられます。意見をまとめる際には、「念のため他の意見も聞いてみたいのですが」と切り出し、そのまま多数派の意見に流さるのではなく、話し合うきっかけを作るのが効果的でしょう。このようにしてみると、違った意見を出すことを遠慮していた人も、話を切り出しやすくなる場合があります。
患者の立場から栄養士を見た時には、社会的なイメージとして「難しく固い職業の人」と思われる方もいるようです。そうした印象から、栄養士の栄養指導が憂鬱だと感じる患者からしてみれば、「指導されても実践できない」と考えている方が少なくありません。せっかく患者に合わせた栄養指導を行っても、実践してもらえなければ意味がないと悩んでいる栄養士もいます。このようなケースでは、1つの原因としてコミュニケーション不足が考えられますが、患者は「指導されても実践できない」ことを口にしない方が多いため、栄養士から「患者が実践できそうか」もしくは「患者が実績できなければ、どうすれば実践できるのか」をもう一歩踏み込んで話してみるようにすると良いでしょう。また、入院している患者は「治療を受けて治そう」と受動的に考えてしまうケースが多く、自ら意欲的に病気を治そうと考えている人ばかりとは限りません。栄養士の栄養指導をする際には、こうした患者の精神状態も考慮する必要があるのです。